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家具
2017/09/25

ウェグナーが愛した椅子

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デンマークを代表するデザイナー、ハンス・J・ウェグナー。彼は2007年、92歳で他界するまで生涯で500脚以上の椅子をデザインしました。デンマークデザインを世界へ送り出し牽引してきたウェグナーの作品は、ニューヨーク近代美術館をはじめ世界中でコレクションされ、今でも多くの人々に愛されています。

生前、弊社のスタッフがウェグナーの自宅を訪れおしゃべりをしていた時のこと。「500脚もある椅子の中で、どれが一番のお気に入りなのか」と質問をしたそうです。するとウェグナーは隣に座っていた妻のインガに「君はどれが好き?」と聞きました。インガは「PP701」と答え、ウェグナーは「君が好きなら、私もPP701が一番気に入っている」というやり取りがありました。なんとも仲の良い温かい夫婦の会話だったそうです。同時に、納得のいく答えでもありました。夫婦のお気に入りであったPP701は、ウェグナーが家族のダイニングチェアのためだけに、6脚しか作らなかった椅子なのです。生涯ダイニングチェアとして使い続けたのですから、夫婦にとって特別な思い入れのある椅子だったに違いありません。家族の歴史を刻んだ大切なものの1つだったのでしょうね。

PP701は1965年にデザインされました。当初自宅のダイニングチェアを探していたウェグナーはなかなか理想のものに巡り合えず、ならば自らデザインしよう、と出来上がったのがPP701でした。自宅のためだけにデザインしたものだったので6脚のみの製作でした。そしてその美しさに魅了された当時の工房ヨハネス・ハンセン社の要望で製品化されたのです。木の製品が多いウェグナーのコレクションの中で、PP701はスチール脚を使った非常に珍しいデザインでもあります。軽快で美しいチェアの背もたれには、十字の契りが施されています。4つの無垢材をつなぎ合わせた際の木目のズレを解消するためにあえて違う木材を使っていますが、それがPP701の美しさの一つともなっています。PP701は小ぶりな椅子ながら、その座り心地は抜群です。ウェグナーは、食事の終わった後にも家族との団欒のために快適に座れるようにと、あえて背もたれと一体化したアームにしました。まっすぐに姿勢良く座らなくても、少し崩して斜めに座ったりと、リラックスした状態でも心地よく座り続けることができます。

前述のウェグナーとの会話の中で、もう一つ、お気に入りのチェアが挙がったそうです。それはPP19ベアチェア。大きな背もたれに包まれながらアームに足を引っ掛けて座ったり、好きなようにリラックスできるベアチェアをとても気に入っていました。晩年、自身の入居する老人ホームの部屋に持ち込んだ唯一のチェアだったそうです。

2つのチェアはともに、当時の工房から製造を引き継いだPPモブラー社にて、デザインと品質を守りながら、一つひとつ丁寧に手作業で仕上げて製作を続けています。